
幼い頃から手塚漫画で育った私にとって、手塚治虫は偉大なる存在。氏が生涯に残した作品は、質・量ともに一人の人間の域を超えているとさえ思います。
その代表作『鉄腕アトム』の中でも最も人気のあるエピソード『地上最大のロボット』をモチーフにしているのが、この浦沢直樹氏の『PLUTO』です。
原作ではプルートゥと戦う七人のロボットの一人であった刑事ゲジヒトを主人公とし、モンブランやボラー調査団の殺人事件を追うという展開。登場する他のロボットやアトムも外見は人間そっくりに描かれ、原作には無いゲジヒトを巡る陰謀や謎が渦巻くサスペンスとなっています。3巻ではエプシロン、アブラー博士、そしてついにプルートゥもその姿を現し、いよいよ盛り上がりを見せます。
私は特に浦沢氏のファンというわけではないのですが、ここまで手塚作品と真正面に向き合い再構築できるという力量には脱帽します。手塚氏の原作の密度がすばらしく濃いということもありますが。ゲジヒトなんか原作では7ページしか登場しない…。
夢、涙、憎しみ、悲しみ、愛情、ロボットが人間に近づくことは進化なのか、それとも悪いことなのかということも随所にちりばめられ、物語に深みを与えています。原作を知らない人が読んでも存分に楽しめることと思います。
ただこれは手塚氏が原作や他作品でも提示していたことでもあります。原作のプルートウは完全な悪ではなく、作った人間のエゴの為に他のロボットを破壊する。借りは返すし約束は守る。最後はアトムの行動に心動かされますが、結局破壊されてしまう。
手塚作品に共通するテーマは他者との理解と共存。そしてそれが不可能に近いほど難しいということも氏は理解している。ですから全ての作品がどこか哀感を帯びているのです。
B5判サイズの豪華版も同時発売されていて、第1巻は原作『地上最大のロボット』(全180ページ)が別冊で付いています。未読の方はオススメです。(ちなみに2巻の付録は、マーブルチョコの箱と復刻版アトムシール、3巻は、浦沢氏の「まんが帳」が付録)
謎や伏線ばかりのストーリーを、今後浦沢氏がどのように進めて行くのか注目しています。
p.s. こうなるとアトムの『ロボイド』も誰か描いてくれないかしらん。今考えるとこのシリーズは5vs5のチームバトルということで、最近のその手のマンガの元祖みたいな話です♪